[台所改装狂奏曲]

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もう一年ほど経過していますが, 台所の改装についてお話したいと思います. 改装当時は, 相手のミスによる問題の連続で全く頭にきており, 事態収拾にてんやわんやで, しばらくは何も書く気が起きない程でした. オーストラリアの仕事の様子を, これを読めば掴んでいただけるかと思います.

<序曲>2003 年 10 月
家を購入してから 3 年が経とうとしており, 屋根を換えて風呂場も改築し, デッキもつけたし... 次は何をやろうかと考えていたある日, ぼんやりとテレビを見ていたら「台所のキャビネット一式, 今月中に契約すれば 30 パーセント引き!」のコマーシャルが飛び込んできたのです. それまで聞いたこともない会社名でしたが, 割引率が高いのが印象的でした. それまで目に付いていたのは, NOBBY KITCHEN の 20−25 パーセント引き, KNEBEL KITCHEN の 13,900 ドルポッキリ, という広告だけでした.

キッチンは前前から何とかしたいと思ってはいました. 古くはないのですが, 使い勝手が悪く, 少し狭くて暗かったからです.

<ショールーム来店>2003 年 10 月中旬
キャンベラには, 家まわりのワークをする人が必ず訪れる Fyshwick と言う地区があります. フェンス業者も窓でもガレージでも, 家の改装も家具も大工道具も, ほとんど全てここでまかなえます. イエローページを見て, お目当ての業者の目星をつけて連絡することもありますが, その時は, 何かの用事で通りがかった際にショールームが目に付いたので来店したのでした.

窓のところに, そう目立つでもなく貼ってある「30 パーセント引き」の広告を見て, 「あぁ, これがあのコマーシャルの会社か」と思いだしました. そのテレビコマーシャルは一度しか目にしていませんが, 後にそこのセールスマンに聞いたところによると, それほど派手な広告でなかったのに, セールでいきなり客が増えて増えて, 忙しくて目が回りそうだったそうです.

店の中で今風なキッチンを眺めていると, セールスの若い女性がまとわりついてきます. 「ハエみたいにうるさいなあ」と思ったのを覚えています. お客をすばやくキャッチしてあちらのペースに持ち込むのが役割の人達なのでしょう. 質問をすると立て板に水のように説明を始めるので, その録音機械みたいな商業的なしゃべり方が不快でした. 台所の質は「悪くないな」と言う位のもので取り立てて特に印象深かったわけではありません. 「いいなあ」と思う質のものはやはりそれなりのお値段がします.

その後, 2−3 社のキッチンを見て廻り, 「3 割引きならあれで悪くないか」と, 数日後にそのキッチンコネクションを再度訪れたのでした.

<セールスマンのジム>
キッチン会社との契約には数段階の過程があります. まずは来店してショールーム係の若い女の子と話をして実物を目にします. 脈がありそうだとあちらが判断すると, どの種類のキャビネットがいいか, ベンチトップ(上のワーク台)は何色でどんな材質(ただのラミネートか御影石か...など)が良いかなど, 具体的なことを尋ねられ, 冷やかしでないかを確かめられます. そして, 次の段階の「デザイナー」と呼ばれるセールスマンの予約を入れます.

私の担当は, アメリカ人のジムでした. 台所の見取り図とサイズ, どういう風にして欲しいかのデザインを持って再度予約来店しました.

店の奥に数個の窓のない個室があって, 客は約束の時間になると, 担当のセールスマンに割り当てられます. ジムは大柄のアメリカ人で, 強烈な巻き舌でおしゃべりをします. 私は持ってきた見取り図を広げ, 細かく希望を述べます. ジムは規定のキャビネットの中から, 希望に添うものを選び, 台所図をコンピューターで仕上げていきます.

赤ん坊連れでの 2 時間の話の最中, 子供がウンチしちゃったのに気付いたのは終わりのほうです. 狭い部屋中にむんむんする臭いが充満していました.

予約時間が切れる頃, ジムはようやく総額を出しにかかりました. キャビネット上下二段であわせて 17 個, 3 割引でも 1 万ドルあまりです.

見取り図を持って帰宅し, 旦那と相談しました. 日本への一時帰国を控えて手持ちが余りない時だったので, 慎重にお金の工面を吟味しました. 台所本体が 1 万ドルだとしても, シンクやオーブン, 床や壁のタイルも買わなきゃいけないし...大工やタイル屋, 電気工事にガスの配管, 水道屋などにもまた同じくらいかかります.

電話でジムに連絡を入れ, デザインの細部変更の打ち合わせをしました. そして, 10 月 29 日, セールの終わる間際に契約をしたのでした.

<デザイナーのクリス>
それから 3 週間ほどした 11 月中旬, 自宅に「デザイナー」と呼ばれるクリスがやってきました. 実際の現場を点検し, 厳密に長さを計ってキャビネット類を発注するためです.

私の希望を再度確認しつつ, 「ああ, ここも変更しなくちゃいけない. まったく, ジムのデザインは...」とぶつぶつ言いながら変更を加えていきました. 変更しても値段はそのままなのが不思議なところです. クリスは持参したラップトップで 3D の立体画像を出してくれたので, 出来上がりが大分実感として掴めました.

うちの新しい台所は, 洗濯場と台所の間の壁を取り払って一体化するというもので, 大工さん(Builder)を巻き込み, 一回り大掛かりで手間がかかります. 壁を取っ払ったら屋根が落ちてきた, ではしゃれにならないので, 資格をもったちゃんとしたビルダーでなければなりません.

台所のリホームは, 家の改装の中で一番大変だと言われます. It involves all trades と表現されますが, ただでさえ連携の悪いオーストラリアの各種業者が, リレーして仕事をこなしていくのです. 予定の 2 倍 3 倍の時間がかかった, と言う話はよく耳にしています.

クリスとの話し合いでは, どの業者がどんなことをするか, キッチン会社の提携の業者の見積もりはいくらくらいになりそうかなども話しました.

クリスマスまでに台所を完成させる意思のない私を見て, クリスはいいました. 「来年のことで急がないなら, 12 月に入ってから出入り業者担当のミッシェルに連絡を入れると良いわ.」と言って帰っていきました.

この 10 月セールで忙しくなって不満のたまったクリスは, その後急に会社を辞めてしまったそうです.

<業者担当ミッシェル>2003 年 12 月
12 月上旬に入って, ミッシェルに電話を入れてみましたが, なかなかつながりません. 水道と電気は大体の見積もりがすでに出ているのですが, うちは特別仕様が多いのです. タイル屋もビルダーも見積もりが取れていません. 机上の計算と現場で実際見てみるのとでは違いが大きいのは今までの経験でよく分かっているので, 作業者に現場に来て見積もりをして欲しいのです. それに, よくよく見てみると, ジムの出した業者見積もりは大雑把で抜けているところが多く, こんなものを鵜呑みにしたらずっと多く請求されそうでした.

クリスマスが近づき, それまでに仕事を済まそうと皆躍起になっていて, 予約がとりにくくなってきました. 「台所改装手順を書いたパックを送るからね.」とのんきに言うミッシェルからようやく提携ビルダーの連絡先を聞き出しました.

その提携ビルダーの「壁取り作業の見積もり 2500 ドル」が高すぎると思った私は, 以前うちの風呂場の改装をしてくれたビルダーに話をしたのです. と, 彼の見積りはなんと 3 分の 1 以下!でした. ここで台所会社キッチンコネクションへの不信は高まりました.

クリスマスまで 2 週間ほどの間に, 水道屋 2 件, 電気屋 3 件, タイル屋 3 件見積もりを自前で取りました. 見積もりと言っても, 仕事を頼まれるか分からないので, 面倒くさがって現場に来たがらなかったり, 約束をすっぽかす業者もいます. タイル屋はピンきりで, 古いタイルをはがして新しい下張りをし, タイルを張る, と言う作業に業者間で 2 倍の見積もりの差が出ました.

自分で見積もりを取る事の良いところは, その業者と直に話をして信頼できそうか品定めができることです. 水道屋もタイル屋も, 個人経営の年季の入ったおじ(い)さんを選びました.

<いよいよ改装本番>2004 年 1 月
日本から帰った 1 月 13 日, 自前調達のビルダーとタイル屋と水道屋に連絡をして再度日にちと仕事をを確認しました. 改装中は無論台所が使用不可になるので, 面倒は最短になるようにしたかったのです.

我々のワークマンはよくがんばってくれました. 15 日の木曜日にガスと水道を止めて(1 日目)台所を取り壊し(2 日目...提携業者), 週末の土曜日にビルダーが壁を取っ払って(3 日目)日曜日に旦那と二人で壁の補修(4 日目), 月曜日から 4 日かけてタイル屋が古タイル引っぺがしと新しタイル張りをキッチン・ダイニング・ホールの 35 平米分仕上げました. 途中ぼろぼろになったシロアリの床食い跡を発見し, 私は床板を買いに走り, ビルダーが駆けつけて床の補修をしてくれました. (5−8 日目)ここで台所の設置準備はお終い. あとは金曜日に台所が入って次の週の初めに水道と電気をつければ完了, 夏休み中に出来上がるね, と思っていたのが甘かったのです.

<台所会社と提携業者のお粗末さ>2004 年 1 月 − 4 月
台所なしで過ごす 9 日目, 毎日デッキでキャンプのように炊き出しをしていた我々は, わくわくして待っていました. 待望の台所設置なのですから. 3 日前に配達されて, リビングに所狭しと山積みされたキャビネット類が片付くのを心待ちにしていたのです.

調子よく途中まで台所を取り付けていた取り付け屋(提携業者)が言うのです. 「あ, キャビネットが違う」と. なんと, 台所の北面の大型キャビネットの 2 個がサイズ違いで配達されていました. ドアも 4 つ色違いです. 「ああ, これじゃあ, 今日はもう取り付けられない」と, 取り付け屋の二人, ギャビンとデイビッドはオフィスに連絡して帰っていきました. 配達されるはずだったレンジの煙突部分も, 手違いで来ていません. 怒った私は, キッチンコネクションのマネージャーのポール君に電話をかけたのは言うまでもありません.

我々は, サイズ違いのでかいキャビネット二つにドアのパック, 2 メートル以上のベンチトップとキックボードとともに金曜日の午後, 置き去りにされました. 正しいキャビネットが配達されるまで, ごちゃごちゃの片付かないリビングとともに 12 日間待つことになったのです.

週末に気を取り直して, 旦那が電気工事をし, 壁の補修を続けました. ビルダーのアンドリューがまたやってきて新しいガラス戸を取り付けてくれました. (10−12 日目)

奥さんが入院していた水道屋兼ガス屋のドンが帰ってきて, シンク下の水道管と蛇口を取り付け, 洗濯機, 食器洗い機もとりつけ, ガスレンジとオーブンもつなげてくれました(14 日目).
木曜日の午後(15 日目)やっとレンジの煙突部分が届いて, ドン君(というかじいさんだけど)が苦労して天井に穴をあけ, 瓦を切って 2 時間かかって煙突を取り付けてくれました. これでなんとか台所は使えます.

ここでふたつ, お粗末な仕事に気がついたのです. いいえ, ドン君ではありません. 彼はがんばってくれました. キャビネット取り付け中にギャビンとデイビットが何かひそひそ話しているのが聞こえてはいましたが, 聞いてもはぐらかして教えてくれないし, 何だか分からなかったのです. その後, キッチンの点検をしていて気付きました. 洗濯機脇の真新しいベンチトップ上に, それとわかるほどの傷が入っているのです. それともうひとつ, 食器洗い機横のベンチトップの側面部のラミネートが, 一部はがれてしまっているのです. ショックで意気消沈してしまいました. マネージャーのポール君が現場にやってきて修理事項として書類を作りました.

週末に壁のタイルを旦那と張りましたが, 台所は中途半端に出来上がっているだけで, もう夏休みは終わりになってしまいました. (18 日目)

2 月に入った次の週の水曜日に, やっと正しいキャビネットが配達され, 取り付けされました. (21 日目)ドアはまだ届きません.

家の外に山済みのベンチトップやキックボードの切れ端, 包装紙や古いシンクやドアなどが金曜日に回収されるはず(提携業者)なのに取りにきません(22 日目). 業者に直接話しても埒があかないので, ポール君に再度連絡したら, やっと次の水曜日(27 日目)にごみを回収にきました.

13 日の金曜日(29 日目), やっと新しいベンチトップ, 正しい色のドア, 側面のラミネートが付きました.

セールスマンのジムは, 「最長 4 日で取り付け完了!」と言っていましたが, 4 日どころか 4 週間ですねぇ. その後, マネージャーのポール君に慰謝料としてシステム引出しを請求しました.

2 ヶ月後にその引出しを取り付ける連絡をしてきたのがマークでした. 「あれ, ポールはどうしたの?」
「ああ, 彼ね, 辞めたよ. 僕がげんさいはデザイナー兼マネージャーさ.」

お粗末な会社のお粗末な仕事ぶり. 社員も居着かないわけだ.

編集後記:このキッチンコネクションは, 前記の Nobby Kitchen を, アメリカの会社が買い取ったものだそうです. 台所自体は老舗の Australian Kitchen Industries が作っているそうですが, アメリカ経営になって余り評判は芳しくありません. と言っても, 今では大々的に宣伝していますが...

December 22, 2004


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